コラム:金融機関が保有する顧客データは”宝の山”(第4話)
【第4話 顧客データはどこにあって、どう利活用できるのか】
多くの金融機関で蓄積された情報を最大限に活かすには?
多くの金融機関ではMCIFやDWHといった情報系システムで個々の顧客の取引データや属性データを月次ベースで蓄積されています。
収益管理や営業指標など、実績データの集計や統計情報として利用されていることが大半ではないでしょうか。
顧客の資金ニーズを推測するというもう一つの活用方法です。
蓄積され続けている顧客データから、個々の顧客の資金ニーズや信用リスクを推測することができ、時間の経過とともに変化する資金ニーズや信用リスクを継続的に推測することができる貴重な情報源です。
その情報を最大限に活かす課題は二つあります。
1.モデルやルールをどのように構築するか?
一つめは、個々の顧客の資金ニーズや信用リスクを推測するためのモデルやルールをどのように構築するかです。
資金ニーズや信用リスクを推測するためには、定点的な観測だけではなく、取引データの動き、つまり動的な観測からアウトプットすることで、より精緻なモデルとして構築できることは第3話で触れさせて頂きました。
数理分析の技術を施したモデルの構築と、そのアウトプット(確率値)をどう利用するかのルールの検討も必要になります。
昨今、様々なAIツールが市場に数多く出回っており、機械化学習などによって自動化の環境が整備されつつあります。
しかし構築したいモデルによっては、金融機関の保有するデータを読み取る能力と数理分析に長けた専門家の力が必要になるケースも少なくはありません。
特に信用リスクを推測するモデルということになると、モデルの精度の良し悪しが信用事業に大きく左右されることになります。
モデルの構造も複雑になるケースがとても多いです。
構築されたモデルはあくまで確率値をアウトプットするためのアルゴリズムです。
個々の顧客毎に推測された商品毎の資金ニーズ率、融資の場合の信用リスク率、これらの確率値から個々の顧客にどのようなアクションやプロモーションをすべきかのルールが必要になります。
この話を続けると、長くなるのでこれくらいとして、またの機会にさせて頂きます。
これらの推測モデルとルールは、情報系システムなどで自動化(プログラム化)しておくか、オフラインでも月次などで適時に実行可能な環境を整備しておくことが必要になります。
2.個々の顧客にどう伝えていくか?
二つめは、ご案内したい内容を個々の顧客にどう伝えていくことができるかです。
ひと昔前まではダイレクトメールでご案内することが一般的であったと思います。
データ分析を通じてご案内したい顧客を抽出し、行内の数々のチェックルールを通過させ、同時にご案内のちらしを作り、顧客宛に郵送するといった流れではないでしょうか。
ダイレクトメールでのご案内の場合、データを観察し分析した時点から顧客の手元に届くまで1~2ヵ月程度の時間が掛かり、そのタイムラグの間に顧客の資金ニーズが変化しているケースもあったのではないでしょうか。
データ分析による資金ニーズの指標は、時間の経過と共に変化・劣化していきます。
スピードは大事です。
またダイレクトメールを郵送した先の10~20%は宛先不明などで不着となり、電話によるアウトバウンドは捕まらず、渉外が足を運んでも不在、このような機会ロスが大きなコストになっているのではないでしょうか。
昨今は様々な手段で顧客とコミュニケーションができる環境が整備されてきています。
スマホの普及率の高さにより、SMSやEメールでの配信に加え、LINEやアプリを利用し、様々な訴求が短時間で行うことができるネット環境がどんどん整備され続けています。
顧客の携帯電話番号とEメールアドレスが入手できていれば、顧客とのコミュニケーション機会は格段に向上することができるわけです。
顧客コミュニケーション環境の実現には・・・?
つまり、顧客データから数学的モデルなどを通じて個々の顧客の資金ニーズを推測しつつ、ネット環境を利用し適宜に顧客へアプローチすることができればプロモーションの効率も良くなるわけです。
ではこのような顧客とのコミュニケーション環境をどのように実現できるのか?
第5話では、その実現方法についてお話しさせて頂きます。
続く...