マネーロンダリング防止に向けた注意点と対策方法

近年、マネーロンダリング(資金洗浄)は国際的に大きな社会問題となっており、「マネロン天国」などと不名誉なレッテルを貼られている日本では早急な対応が迫られています。
FATF(ファトフ)による2008年のマネーロンダリング対策に関する国際評価の結果を受け、政府はこれまで法整備の強化・金融機関に対する政府間組織の立ち入り調査の実施などの対策をし、2019年には4回目の審査が行われました。
それに伴い、金融機関窓口での本人確認や対策を強化するよう金融庁の要請も強まっています。しかしながら外国人による口座転売問題や具体的な対策方法にお悩みの金融機関様は多いのではないでしょうか。
今回はマネーロンダリングを防ぐ上で知っておきたい注意事項や必要な対策方法についてお話します。
<目次>
マネーロンダリングの手口
犯罪組織は巧妙な手口で、不正な資金の隠蔽やさらなる犯罪への支援を行っています。それらの活動に対して、マネーロンダリングという形で多くの金融機関などのサービスが悪用されているのが現状です。
違法な手段で得た資金をいくつもの口座を経由し、さらに金融商品や不動産、貴金属などに資産の形を変化させることによってお金の流れや大元がわからないようにする行為やテロや詐欺グループ、経済制裁対象国を支援し資金源にする行為などがこれにあたります。
それから、過去には詐欺の被害金を正当な事業収益であるかのような嘘の説明をして金融機関から払い戻そうとした事例もあります。犯罪組織の力を抑制するためにも、金融機関は本人確認や対策をより一層強化して不正取引を未然に防ぐことが大事です。
国際社会の評価と不十分な対策による金融機関のデメリット
マネーロンダリング対策の国際評価
現代社会に核やミサイル・テロなど憂慮すべき課題は多く、マネーロンダリング対策には国際社会が協力して取り組まなくてはなりません。日本も例外ではなく、どの程度有効な対策が実施されているのか国際社会が注目しています。
その対策度合いをはかる一つの指標・活動の中心として存在しているのが国際組織のFATFです。FATFの調査方法は、大手銀行だけでなく地方銀行や証券会社、仮想通貨交換業者に対して、顧客の本人確認や不正送金防止対策など51項目について実地検査を行うというものです。2019年に日本で実施された審査に関しては2020年の夏に結果が公表されます。
そしてFATFの審査で高い評価を得ることは、国際的な信用につながります。しかし、2008年の前回審査で日本は顧客管理不足を指摘され、マネーロンダリング防止対策に関する国際評価は残念ながらあまり高くありませんでした。金融庁が金融機関へ対応改善を強く求めている背景には国際的な信用を回復させようという狙いもあるのです。
不十分な対策が招くデメリット
このままマネーロンダリング防止対策が不十分であると評価され続けた場合には、完全に信用を失い日本の金融機関は海外金融機関とのコルレス(海外送金時における中継銀行)契約の解除を求められる可能性があります。
海外からの監視の目が厳しくなり、活動が大幅に制限されることも考えられるでしょう。例えば、海外取引時に資産査定が厳しくなり決済経路が絞られ海外送金できないケースの発生などです。これは日本の貿易に大きな影響を及ぼすでしょう。また、規制当局による巨額の制裁金も金融機関にとって大きな問題です。
これらが現実のものになってしまうと、自行の経営状況だけでなく日本の金融業界全体の評価への影響が懸念されます。
このように金融機関での対策強化は政府だけでなく国際的にも求められています。対策が不足していると金融機関へのデメリットは大きいです。
では、具体的にはどのような対策が必要なのか次の項目でお話していきます。
金融機関に求められる対策方法
何より重要なのは、従来よりも取引内容や目的・本人確認を厳重にすることです。そのほか、顧客の格付けや顧客管理の強化も有効な方法でしょう。
この項目では、日本や海外で実際に有益とされている金融機関の対策をピックアップしてご紹介します。ぜひ、ご参考にしてください。
日本金融機関での取り組み
・現金の持ち込み送金を受け付けない
海外送金のために訪れる口座を持たない一見客も多いため受け付けを停止する動きが広まっています。
・マネーロンダリングのリスクを考慮した全顧客の格付け
海外業者との資金のやり取りが多い顧客をリスクが高いと判断し把握します。
・口座開設時の取引目的についての質問項目を増やす
・在留期間や資格を更新した外国人に対して再確認を強化
・口座を一定期間利用していない場合や確認・資料提出依頼に理由もなく回答しない場合に、払い戻しの制限をする
海外金融機関での取り組み
海外の金融機関では実例をもとにしたリスク分析やそのシステムの導入を重要視しているようです。また、各取引のリスクに応じて対応を変える方針を経営陣が明示、行内にマネーロンダリング対策の専門チームが設置されていることもあります。
それから日々の取引をシステム導入でモニタリング・フィルタリングすることも一般的になりつつあります。システムがあれば送金最終受取口座の確認を行い、不審な口座からの資金移動のモニタリングにも力を入れることができます。最近ではAI分析を取り入れている金融機関もあるようです。
このように海外では不正取引を効率よく監視する体制が整ってきています。海外金融機関の動向も参考にしてみてはいかがでしょうか。
特に注意しておきたい取引
外国人名義の口座の不正送金に注意
昨今、日本に来た外国人が帰国する際に不要になった口座を解約しないまま不正に転売し、マネーロンダリングに利用されるケースが増えています。
日本政府では中小企業の人手不足問題に対して、これまで外国人を多く受け入れる政策や外国人の在留資格に「特定技能」を新設するなどの対策を行ってきました。外国人増加に伴い、口座が不正に売買されるリスクも上昇することになりますから、より適切な顧客管理体制が求められています。
日本の金融機関で実行できる対応としては、外国人が口座開設する際に、窓口で名前や勤務先、在留期間満了日を証明書類で確認することなどが挙げられます。犯罪者は架空名義口座の使用や正当な取引を装っているため、やはり本人確認は有効です。
それから在留期限切れの外国人が日本に滞在しているのかどうか居場所を確認し、国外であった場合には口座取引停止や解約をするという犯罪防止策も考えられます。ただこれには手間と時間がかかるため、一見客の外国人は全員口座開設を断っているという金融機関もあるようです。
FATFの審査でも、外国人名義の口座管理が徹底されているかどうかは重要視されていると言われています。今一度、顧客管理体制を確認してみてください。
そのほか要確認の取引
外国人の口座転売問題の他に、取引内容に関して特に注意して本人確認しておきたいケースとしては以下のようなものが挙げられます。
・職場や住居から遠い場所での口座開設
・多額の現金・小切手による取引
・その人の収入や資産に対して高額すぎる取引
・短期間で頻繁な取引
・送金先や目的が不明瞭な取引
・200万円を超える大口現金取引
・10万円を超える現金送金
過去日本では、数億円規模の不正な海外送金の見逃しもありました。対策が行き届いていない小規模店舗がターゲットになりやすいため注意が必要です。
まとめ
今回はマネーロンダリング防止に役立つ注意点や対策方法についてお話してきました。今後も日本の金融機関ではマネーロンダリングの対策に、より一層力を入れる必要があります。クレジットカードや仮想通貨などを利用した新しい手口が増えることも考えられるため、デジタル化にも対応した対策が求められていくでしょう。次回は、外国人による口座の不正転売を防ぐため、弊社サービスを活用して口座の本人確認を行った施策についてご紹介いたします。