コラム:金融機関が保有する顧客データは”宝の山”(第2話)
【第2話 金融機関が蓄積・保有する顧客データとは】
金融機関が持つ顧客データとはどのような情報なのでしょう。
銀行業務の中で日々蓄積され続けているデータです。
新たに顧客からアンケートをとったり、外部からデータを拝借してきたりする必要はありません。
金融機関では大きく分けて三つのデータが取得できています。
1:トランザクションデータ
第一に、勘定系で日々取引されているトランザクションデータです。
ATMや店頭による入出金取引、給与振込、公共料金やクレジットカードなどの引落決済、貯蓄性預金の取引、保険や投信の取引、そしてローンの利用や返済等々、日々勘定系で取引されたトランザクションデータはMCIFやDWHなどの情報系システムに蓄積され続けています。
このデータは顧客と金融機関の間で行われた実際の取引実績です。
しかも定点での観察だけではなく、時系列に動的に観察することができます。
実はこの動的に観察できることには非常に大きな意味を持つことになります。
2:顧客の属性情報
第二に、顧客の様々な属性情報です。
口座開設時に性別や生年月日といった基本的な情報は取得できています。
ローンの取組があれば、その時の所得や業種、職種、役職、勤務先規模、持家か否か、配偶者の有無や扶養家族の情報が取得できています。
住宅ローンの取組であれば、同居する配偶者と子供の性別や生年月日など、もう少し詳細の情報が取得できているのではないでしょうか。
配偶者と子供の情報を取得することにより、家族名寄せが可能になるといったメリットも得られることになります。
属性情報で注意することが一つあります。
性別と生年月日以外の属性情報は、時間の経過と共に変化するということです。
情報取得時と同じ会社に勤務し同じ仕事をしているかどうかは分からないし、所得水準も変化しているでしょう。
3:Web上での行動履歴
第三に、Webページのアクセス履歴など、デジタル上での行動履歴です。
デジタル化の技術革新により、昨今では様々なサービスによる行動情報が取得できるようになりました。
営業店やコールセンターでの相談受付に加え、金融機関が提供するアプリの利用、LINEの活用、チャット、Eメールなど、様々なチャネルを利用して顧客とのコミュニケーション手段が利用した情報です。
しかし二つの問題があります。
一つめは、これらのチャネルで入手した情報はテキスト情報や音声情報が多いということです。
テキスト情報や音声情報はコミュニケーション機能の向上を目的とし分析されているケースもありますが、テキストマイニング技術が進歩発達しているとはいえ、入手できたテキスト情報は一部の顧客に限定されることもあり、どのように利活用できるかはもう少し時間が必要ではないかと思います。
二つめは、外部メディアとして家計簿アプリの利用促進が急速に高まっています。
銀行口座取引だけではなく、クレジットカードや各種のポイントやマイルと連動し、資産やキャッシュフローの管理が可能な時代を迎えています。
これらのデータをどう利活用できるのか様々な分析や研究が進められていますが、まだ顧客に十分に浸透している状況ではなく一部の顧客に限定されていることから、こちらもどのように利活用できるかはもう少し時間が必要ではないかと思います。
本コラムで主に解説する範囲
ここでは第一の口座取引データと第二の顧客属性データに絞りたいと思います。
金融機関の自前の業務(システム)の中で、確実に取得できる情報だからです。
この二つのデータから顧客の資金ニーズを観察する上で、十分なデータであることは経験上、間違いありません。
このデータが宝の山の源泉であることは間違いないのです。
ではこれらのデータから、個々の顧客が必要としている資金ニーズはどのように推測できるのか?
第3話では、その手法についてお話しさせて頂きます。
続く...